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主に、中国語圏の文学・音楽・映画等について記します。

【映画】Fly Me to Minami~恋するミナミ

『Fly Me to Minami~恋するミナミ』2013・日本・シンガポール/シネ・ヌーヴォ(大阪アジアン映画祭)/鑑賞日 2013.03.17./星4.5

 大阪アジアン映画祭@シネ・ヌーヴォで鑑賞。この映画祭での上映が世界初公開。秋には一般上映も予定されているそうだが、その際にはさらに編集が加えられたバージョンになるという。

 かつては実験的な作風が際立っていたマレーシア出身のリム・カーワイ林家威監督が、前作『新世界の夜明け』に続き、大阪を舞台にしたハートウォーミングな映画を作り上げた。だが、アジアを股にかけて活躍するリム監督のこと、一筋縄ではいかない設定になっている。香港で雑誌の編集を手がけるシェリーンと、アマチュア・カメラマンの大学生タツヤ。キャビン・アテンダントの韓国人と、コリアタウンで韓国雑貨を販売するシンスケ。二組のカップルの出会いと別れを描く。関西空港、大阪市立大学三角公園など、馴染みのある場所が次々と登場。特に大きな出来事が起こるわけではないのだが、心あたたまる。劇中では、日中関係の悪化などにも言及される。そう、これは2012年冬の大阪におけるアジアの人々の交錯の一断面なのだ。マレーシア出身の監督だけに、ちゃんとマレーシア人も登場する仕掛けも(香港人という設定である主演のシェリーン・ウォンも、実際にはマレーシア出身とのこと)。

 我らが大阪を美しく描いてくれた監督に感謝したい。劇場公開版も楽しみだ。

 さて、上映後のQ&Aでは、業界人の方だろうか、監督の足品は「本」(脚本)が弱いのが残念だ、とする意見もあった。それに対して、監督は、映画は脚本だけによって決まるのではない、と答えていたが、同感だ。私自身はちょっと頓珍漢な質問だったが、香港のシーンでは「法輪功」の横断幕などが数度映るが意識的だったのか、またラストシーン近くではスーパー玉出のネオンサインが映るが、同スーパーでロケをした『新世界の夜明け』と併せて考えると、これも意図的だったのか、ということを聞かせていただいた。どちらも意図的ではない、とのこと。(Q&Aでは監督は「法輪功」という言葉を聞き間違えられたのだが、あとでサインを頂いた時に再確認しました。)

 

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