『デ・スーナーズ/テレサ』から二題~杜麗莎とロータス蓮花樂隊について
- アーティスト: デ・スーナーズ
- 出版社/メーカー: SHOWBOAT
- 発売日: 2012/03/24
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この『デ・スーナーズ/テレサ』は、3年ぶりに発売された彼らのアルバムで、後述するように若干のメンバーチェンジがある。が、より注目すべきは、タイトルにあるように「テレサ」という歌手が二曲でゲスト参加している点であろう。
テレサとは何者か。オリジナル・ライナーノーツでは、以下のように記されている。
…フィリッピンと香港の混血娘テレサも、日本人の女性歌手が束になっても敵わないようなフィーリングを持っている。歌は多少荒っぽいところもあるが、そのパンチと黒人的フィーリングは、このLPにも入っている「ゲット・レディ」などにも良く現われているが、スーナーズのバッキングと相まってエキサイティングな迫力をぶっつけている。このテレサは、デノンからソロでシングル盤を出している。
たった二曲しか歌っていないのにもかかわらず、先の鈴木やすし氏の文章でも、「当時14歳の女性シンガー”テレサ”の歌唱力が圧巻。」と絶賛されている。一方、小川真一氏によるCD解説では、さらなる情報がある。
このテレサについても判らないことが多いのだが、フィリピンと中国のハーフで、香港で歌っているところを勝新太郎にスカウトされ、71年の6月にDenonレーベルよりシングル「混血児マリー」でデビュー。得られる情報としてはこれくらいだ。歌声を聞いた限りでは、歌唱力もあり14歳とは思えないほどの実力を持っている。
勝新太郎がスカウトとは興味深い、と思って検索すると、なんと当時の記事を転載したサイトを見つけた。出典不明ながら、1971年当時の記事であることは間違いなさそうだ。
座頭市のオジサンが混血児テレサをバックアップ
なお、テレサ「混血児マリー」(あいのこまりー)はyoutubeでも聴ける。
その直前でアグネスのバックで香港に行ったのも大きいな。香港のディスコで現地のバンドとセッションしたんだけど、ロータスっていうバンドがあった。映画音楽なんかもやっていて、うまいバンドだったんだけど、なんとベーシストがデ・スーナーズ(60年代に日本で活躍したフィリピン人による実力派GS)のベーシストだったんだよ。なんか東アジアの音楽シーンを見るような気がしたね。
短いものだが、同様の証言はこちらのサイトにもある。このインタビュー記事は、鈴木慶一とムーン・ライダーズ『火の玉ボーイ』がエキゾチックな色彩を持っていることに香港ツアーが影響していることの証言としても重要だが、何と言ってもサミュエル・ホイ(許冠傑)のバンドであるロータスと鈴木氏が共演している、ということに驚かされた。サミュエル・ホイといえば、言うまでもなく「Mr.Boo」シリーズて知られるホイ兄弟の一員にして、映画や歌で活躍した大スター。ロータス蓮花樂隊というバンドは、彼がかつて所属していたバンドで、この時期には彼は既にソロ歌手としてのキャリアをスタートしていた。だが、ホイ兄弟の映画の最初の二作、すなわち『Mr.Boo!ギャンブル大将』『天才與白痴』にも「蓮花(大)樂隊」というクレジットがあり、当時の彼のバックバンドを「蓮花(大)樂隊」と称していたのだろう。
以前この記事についてツイッターでツイートしたところ、鈴木慶一氏からもレスポンスを頂いた(ありがとうございます!)。だが、どうしてもはっきりしなかったのは、鈴木氏が共演したデ・スーナーズのベースとは誰なのかである。60年代のレコードでは、ベース兼ボーカルとしてCris Solanoの名前がクレジットされている。だが、彼は長く日本に留まって音楽活動を続けたようである。では、鈴木氏の言うベーシストとは誰か。実は、『デ・スーナーズ/テレサ』ではCris Solanoはボーカルに専念し、Butch Tingoというベーシストが加わっているのである。鈴木氏の言うベーシストはこの人ではないだろうか。
なお、『デ・スーナーズ/テレサ』のジャケットにも顔写真はあるが不鮮明。まさに鈴木氏がロータスと共演した1975年に撮られた『天才與白痴』に彼らの演奏シーンがある。精神病院を扱ったこの映画、日本未公開でソフト化もされていないが、香港ではDVDも出ており、演奏シーンはyoutubeでも見られる(→ココ)。どなたか、『デ・スーナーズ/テレサ』と見比べて、同一人物か判定して頂けないだろうか(自分にはちょっと無理です)。
以上、『デ・スーナーズ/テレサ』から考えたり調べたりした、香港流行音楽に関する二題でした。
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[付記]テレサの「混血児マリー」が勝新太郎監督主演の『顔役』に使われたことは上に記した通りだが、彼女はキャバレー歌手として『顔役』に出演もしていたことが分かった。こちらの「勝新『顔役』分析採録シナリオ」というウェブページに、27シーン「テレサ・カーピオのショーである」と明記されている。そして、「混血児マリー」を歌っている。(2011.7.3.)