雲南ロケ映画、雲南の表象 - 備考欄のようなもの

　久しぶりの更新ですが、小ネタです。

　明日から勤務先の共同研究で雲南に行きフィールドワークを行う予定ですが、その間に雲南大学でミニシンポを行うことになっています。正式な研究発表ではなく、10分程度で自分の研究動向、興味関心などをプレゼンテーションすればよいと思うのですが、いちおう、20-21世紀の「雲南の表象」というテーマで発表しようと思っています。

　文学の世界で言うと、1920年代に雲南~ビルマを放浪した作家・艾蕪のテクスト、あるいは戦時下の西南聯合大学に勤めた作家たちのテクストなどがすぐにイメージされますが。そのあたりは、雲南でプレゼンするとして、ここでは20世紀後半以降の雲南ロケ映画をリストアップしたいと思います。

　文革以前は、政府の少数民族政策との折り合い、あるいは少数民族の伝統を知識人がどのように表象するのか、という問題があるでしょう。でも、このリストにある映画のほとんどは21世紀のもの。21世紀になってどうしてこれほど増えたかということには、天龍八部影視城(大理)の成立(2003)も無関係ではないでしょうし、観光業の誘致、フィルム・ツーリズムという見地からも説明できるのではないかと思います。あるいは香港返還、グローバル化などにより、大陸以外の視線が雲南に注がれるようになったということも言えるかもしれませんが。ともかく、以下が雲南で撮影された映画リストです。気がつく範囲内のものなので、漏れも多分にあると思います(特に文革以前)。テレビドラマは割愛しました。

五朶金花(五人の娘) 【中】1959 王家乙

阿詩瑪【中】1964 劉瓊

青春祭(青春祭) 【中】1985 張暖忻

孩子王(子供たちの王様) 【中】1987 陳凱歌

黑色走廊【中】1990 王彪、呂小龍

雲南故事(雲南物語) 【港、中】1994 張暖忻

中国の鳥人【日】1998 三池崇史

諾瑪的十七歲(雲南の少女　ルオマの初恋) 【中】2002 章家瑞

雲的南方( 雲の南へ )【中】2003 朱文

美人草【中】2003 呂樂

玉觀音（デスパレート愛されてた記憶）【中、港】2003許鞍華

我愛天上人間【港、中】2004 趙崇基

好大一對羊(ようこそ、羊さま。) 【中】2004 劉浩

千機變II之花都大戰(花都大戦ツインズ・エフェクトII)【港】2004 元奎、梁柏堅

千里走単騎（単騎、千里を走る。）【中、日】2005 張藝謀、降旗康男

花腰新娘(雲南の花嫁)【中】2005 章家瑞

芳香之旅【中】2005 章家瑞

無極(PROMISE 無極) 【港、中、日、韓】2005 陳凱歌

神話(THE MYTH/神話) 【港、中】2005 唐季禮

十日天堂【中】2006 吳濤

落葉歸根【中】2007 張揚

男才女貌【中】2007 馬楚成

太陽照常升起(陽もまた昇る) 【中、港】2007 姜文

樱桃(さくらんぼ母ときた道) 【日、中】2007 張加貝

公園(公園)【中】2007 尹麗川※

箱子(スーツケース)【中】2007 王分※

車票(追憶の切符) 【中、港】2008 張之亮

十全九美【中】2008 王岳倫

李米的猜想【中】2008 曹保平

這兒是香格里拉(シャングリラ) 【中、台】2008 丁乃筝※

紅河【中】2009 章家瑞

血戰：最後的吸血鬼(ラスト・ブラッド) 【港、法】2009 Chris Nahon

大兵小將(ラスト・ソルジャー) 【中、港】2010 丁晟

假裝情侶【中】2011 劉奮鬥

武俠(捜査官Ｘ) 【港、中】2011 陳可辛

绝代-末代女土司【中】2011 金琛

轉山(転山)【中、台】2011 杜家毅

高海拔之戀II(高海抜の恋)【港】2012　杜琪峯

阿佤山【中】2012 馬會雷

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若干のコメントを加えたいのですが、1959年の『五朶金花』は、日本中国友好協会東京都連合会等による上映が、今年予定されています。

http://www.jcfa-net.gr.jp/tokyo/eiga/eiga_index.html

『青春祭』や『子供たちの王様』は昔感動した名作。今年、大阪アジアン映画祭とロードショウで、『高海抜の恋』『捜査官Ｘ』を続けざまに見て、雲南ロケ映画って増えているなあ、と痛感したのですが、見逃していたものにも佳作が多そう。『雲南物語』は日本の残留婦人問題を扱っています。『男才女貌』は余文楽と高圓圓が出演する青春映画で、準主役として日本人・鈴木仁と三宅尚子も出演しているといいます。周迅と売り出し中の鄧超が出演する『李米的猜想』も日本未公開ながら興味深い。そのような大作の一方で、雲南の風俗を伝えようとする映画も作られています。

　今後、雲南ロケ映画は、単なるエキゾチズムの消費で終わるのか、それとも別の可能性があるのか、目が離せません。